ブラッシング指導(TBI:Teeth Brushing Instruction)とは、歯科衛生士などの専門家が、患者さん一人ひとりに合った歯磨きの方法を丁寧にお伝えすることです。その最大の目的は、虫歯や歯周病の主な原因となるプラーク(歯垢)を効果的に取り除くことにあります。
虫歯や歯周病を予防し、お口の健康を保つためには、このプラークをいかにコントロールするかが非常に重要です。つまり、正しい歯磨きの方法を身につけ、お口の中の細菌を減らす「プラークコントロール」が何よりも大切なのです。
当院では、歯科衛生士が患者さんの生活習慣、お口の状態、普段の歯磨きの仕方などを詳しくお伺いします。そして、精密な検査結果とカウンセリングを通じて、あなたにぴったりのブラッシング方法を具体的に指導いたします。
ブラッシング指導のゴールは、患者さんご自身がプラークコントロールの重要性を理解し、主体的に日々のセルフケアに取り組めるようになることです。
まず、歯科衛生士が問診やカウンセリング、そしてお口の中を詳しく検査し、あなたの口内環境をしっかり把握します。プラークの付着具合や虫歯・歯周病の有無、補綴治療の有無、手先の器用さ等を確認していきます。
また、普段の歯磨きにどれくらいの時間をかけているか、どんなタイミングで磨いているか、使っている歯磨き粉や歯ブラシの種類、デンタルフロスなどの補助グッズを使っているか、そして生活習慣なども詳しくお伺いし、これらの情報をもとに今後のブラッシング方針を検討していきます。
次に、実際にあなたに普段通り歯磨きをしてもらいます。磨き終わった後、染め出し剤を使って磨き残しがないかを確認します。染め出し剤は、歯と同じ色で目に見えにくいプラークを赤く染めてくれる薬剤です。
プラークが赤く染まった部分が多い場合は、まだ十分に磨けていない証拠です。この染め出しの結果と磨き残しの割合を数値で確認しながら、どこが磨けていないのか、どうすれば改善できるのかを具体的に見ていきます。
磨き残しが分かったら、それらを減らすための正しいブラッシング方法を分かりやすく説明します。お口の模型を使いながら、歯ブラシの持ち方や力の入れ具合、歯ブラシを動かす方向などを実践的にレクチャーします。
また、歯と歯の間など、歯ブラシだけでは届きにくい汚れもありますよね。そういった部分には、デンタルフロスや歯間ブラシや、シングルタフテッドなどのなどの補助グッズが非常に効果的です。これらの補助グッズの正しい選び方や、効果的な使い方についても丁寧にお伝えします。
歯ブラシをギュッと握りしめて磨いていませんか?力が入りすぎると、プラークを効率的に落とせないだけでなく、歯や歯ぐきを傷つけてしまう原因になります。
理想的なのは、鉛筆を持つように軽く歯ブラシを握ることです。こうすることで、余計な力をかけずに歯を磨けます。ポイントは、歯ブラシの毛先が広がらない程度の軽い力で磨くことです。日常的にゴシゴシと強く磨いていると、歯や歯ぐきがすり減ってしまい、知覚過敏を引き起こす可能性もあるので注意しましょう。
歯磨きをする際は、歯を1〜2本ずつ、小刻みに歯ブラシを動かすイメージで磨きましょう。
歯の表面は歯ブラシを垂直に当てて磨き、歯と歯ぐきの境目は45度の角度で歯ブラシを当てるのが理想的です。一箇所につき20回程度、小刻みに動かしながら丁寧に磨いてみてください。
もし歯が重なり合っているなど、歯並びに少し問題がある場合は、歯ブラシを縦にしたり、角度を変えたりしながら、一本ずつ工夫して磨くことを心がけると良いでしょう。
歯磨きは、1回あたり5分〜10分ほどの時間をかけて磨くのが理想的とされています。歯を1〜2本ずつ丁寧に磨いていくと、大体5分程はかかるはずです。もし1分程度で歯磨きを終えているなら、磨き残しが多くなっているかもしれません。
毎食後の歯磨きすべてに10分かけるのは難しいかもしれませんね。でも、1日1回、特に夜の歯磨きの時間だけでも、じっくりと時間をかけて丁寧に磨く習慣を身につけることをおすすめします。これが、お口の健康を長く保つ秘訣です。
どんなに丁寧に歯ブラシで磨いても、歯と歯の間の汚れは歯ブラシだけでは完全に落としきるのが難しいです。歯と歯の間のプラークや食べかすを取り除くためには、歯間ブラシやデンタルフロス、シングルタフテッドを併用する必要があります。
最低でも1日1回は、歯ブラシと合わせて歯間ブラシやデンタルフロス、シングルタフテッドを使う習慣を身につけましょう。ただし、こちらも力を入れすぎると歯や歯ぐきを傷つける原因になるので、適切な力加減で使用してくださいね。